1837 空想
電車を降りて改札を抜けたいが
私にはその資格がないようだ。
さぁどうしよう、と考えていると
目の前にあらわれた恋人たち。
仲睦まじく微笑ましい様子。
今日から数えてちょうど一年後、激しい喧嘩の後別れてしまうなんて信じられないほどである。
私は
2人が手を繋いでいるのを確認するとすぐさま近寄り、
その
ロウで接着された手の上にそっと自分の手を添えた。
えいえいおー!
私は掛け声をあげる。
そうすると
世界は進んだんだ。
誰の動体視力も追いつかない程に。
私は今、
黄色と黒の縞縞模様の
丹頂鶴の前にいる。
改札を出る資格を得、気付かぬうちにそれを行使したらしい。
丹頂鶴はこう言った。
さらに特典として
ここに折り畳まれた三角形のソファーに
腰掛けてウツラウツラお昼寝をする資格が与えられますが
さぁどうしますか?!
さぁどうしよう。
資格が資格を呼ぶ
レースが始まったのである。
危険な丹頂鶴さんよ
このレースのゴールはどこでしょう。
レースと呼ぶからには
対戦相手がいるわけであり、
今日もどこかで
こんなレースが繰り広げられているのだ。
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