ただそれくらい


私は
群生する水苔に埋もれるように
しとっ、と座っている
砂時計の砂が落ちる音が聞こえるくらい
静かなのは、
それを水苔が望んでいるから


時間とは、白く粘度の高い液体

美しい年輪の模様をした丸い玉が
時折、
空から落ちてくる


液体は
タポル、と音をたてて
落ちてきた丸い玉を受け止め
とても気怠そうに
ミルク冠を作る

玉は沈んでいくんだろうが
液体の底にたまっているのだろうか?
そもそもこの液体に
底があるのかさえ知らないけれど



私は
しとっ、と座ってるだけで

見るものといえば
ただそれくらいで
考えることといえば
落ちた玉の行方のことくらい






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